これまで幾度となく映像化されてきた松本清張先生の小説「砂の器」が2019年にスペシャルドラマ化されます。
今回2019年版「砂の器」の主演を演じるのは東山紀之さん。
時代設定も現代に合わせて作られており、また違った「砂の器」が楽しめそうです。
そこで今回は「砂の器」の
・原作版
・中居正広さんが主演を努めた2004年のドラマ版
2つの大まかなあらすじ・ネタバレ概要と、モデルとなった実話の事件もあるようなので、合わせて紹介します。
ラストまでネタバレしていますので、結末を知りたくない方はご注意ください。
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砂の器ネタバレあらすじ【原作版】
ある日の早朝、駅の操車場にて、男性の遺体が発見された。
遺体は顔や手を潰されており、身元不明。
しかし、警察の調べにより、被害者が近くのバーで若い男性と飲んでいたことがわかり、東北弁訛りで「カメダは変わりないか‥」と言っていたことがわかる。
捜査を担当する今西刑事は「カメダ」が二人の共通の人物なのではないかと考え、東北に向かうが手がかりは得られず、捜査は難航した。
今西はちょうど東北を訪れた際、東京の文化人集団「ヌーボーグループ」が新聞記者から囲み取材を受けているのを目撃する。
グループの中でも、作曲家の和賀映良は、政治家の娘との婚約も決まり有名であった。
捜査は行き詰まっていたものの、その後被害者の身内が名乗り出てきたことにより、被害男性は「三木謙一」という島根に住む巡査であることが判明。
被害者が発していた「カメダ」というのは「亀嵩(かめだけ)」という、東北訛りに似ている島根の地名だった。
遺体の状況からして、三木に恨みを持つものの犯行であろうと今西刑事は考え、三木が巡査として勤務していた島根に向かう。
しかし、三木のことを悪く言うものはおらず、困っている人を積極的に助ける優しい男性であり、誰かに恨みを買うような人物でないことがわかった。
三木は多くの人を助けていたが、ある日ハンセン病を患い、全国の寺を点々としていた千代吉と、秀夫という親子を保護する。
当時二人は石川県の村に住んでいたが、父・千代吉がハンセン病にかかったことがわかると妻は家を出て行き、激しい差別を受け、千代吉は息子・秀夫を連れて村から出ていった。
親子で全国を転々としているうちに、「亀嵩(かめだけ)」で、三木謙一に出会ったのだった。
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ハンセン病は当時、不治の病として恐れられていた。
同じ家族内で患者が発見されることもあってか
・遺伝性のあるもの
・強い感染力がある
という間違ったイメージが広がり、ハンセン病だとわかると、その家族は激しい差別を受けていた。
千代吉と秀夫たちも、激しい差別の偏見にさらされ続けたため、故郷を捨て村を出てきたのだった。
二人を保護した三木は、ハンセン病を患っている千代吉を隔離し、一人になった息子・秀夫を預かって可愛がった。
しかし、秀夫は村に馴染めず失踪し、大阪の和賀夫婦に拾われた。
その後、戦争が始まり、和賀家の戸籍などが焼失。
日本が混乱する中、秀夫は和賀夫婦の長男になりすまし、戸籍を作成した。
そう、「和賀英良=秀夫」だったのだ。
ハンセン病の父を持ち、激しい差別を受け続けた秀夫は、別人になるべく生きてきたのだった。
やがて、作曲家としての成功を収め、政治家の娘との結婚も決まっていた。
しかし、そんな中偶然にも三木謙一が「和賀=秀夫」であることに気づき、訪ねてくる。
和賀にとって三木は恩人である。
しかし、自分の身元がバレ、これまで築き上げてきたものが失われてしまうかもしれない‥。
和賀は自分の素性がバレないようにするために、三木の命を奪ったのだった。
(おわり)
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砂の器【中居正広版の結末】
2004年。
中居正広さんが天才ピアニスト和賀を演じ、ドラマ化され、平均視聴率は20%を超え大きな反響を呼びました。
ドラマ版では、時代を昭和⇒平成に変更され、現代版としてアレンジされたため、原作版とは違った部分があります。
犯人は「和賀」という原作版と同じですが、原作と大きく違う点は、和賀の生い立ちの部分についてです。
これまた、原作版と同じくかなり切なくも儚い内容となっていますので、簡単に紹介します。
※ネタバレとなりますので、知りたくない方はご注意ください。
人気ピアニストとして活躍する和賀は、政治家の娘との結婚も決まっており、全てが順風満帆だった。
しかし、「和賀=秀夫」であることに気づき、訪ねてきた「三木謙一」の命を奪ってしまう。
秀夫は大畑村という田舎町に生まれた。
両親と秀夫の3人家族。
慎ましく暮らしていたが、住民の反対も虚しく、大畑村にてダム建設が行われることとなり、かつてから何かとのけものにされてきた秀夫の父・千代吉が村人のハケ口となり、村八分が始まる。
秀夫も学校で、激しい差別といじめにあった。
そんな中、母が胸の痛みを訴え倒れてしまう。
千代吉は、村の医師に助けを求めるが、医師は診ようともせず、村人からはバカにされ、母は亡くなってしまった。
千代吉は、激しく怒り、村人の命を次々と奪い、村中に火を放った。
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やがて、千代吉と秀夫は村を捨て、全国を転々とした生活を送り、三木が住む「亀嵩」に行き着いた。
倒れてしまった千代吉と秀夫を三木は保護し、一緒に暮らし始めるが、後に三木は千代吉が起こした事件を知り、千代吉を説得し自首させた。
父と離ればなれになり、残された秀夫は、三木の息子として学校に通い始めるが、事件のことが亀嵩でもバレてしまい、激しい差別やいじめに合う。
三木夫妻に励まされるものの、耐えきれなくなった秀夫は三木の元から姿を消した。
やがて秀夫は長崎に辿り着き、保護される。
しかし、長崎で激しい集中豪雨に合い、秀夫の唯一の友人だった和賀が亡くなってしまう。
秀夫は、和賀を名乗り和賀になりすまして生きることを決意。
こうして、和賀として生き、ピアニストとして成功を収めたのだった。
しかし、全てが順調に思われたが三木謙一が現れる。
和賀の戸籍になりすましたことが、三木に知られてしまい、三木の命を奪ってしまったのだった。
全てが明るみになり、最後のコンサートを終えた和賀は逮捕された。
しかし、連れて行かれたのは医療刑務所。
そこにはベッドに横たわり意識が朦朧とした年老いた父・千代吉の姿があった。
秀夫は「あなたの息子であることが嫌だった‥。三木さんを殺してしまいました‥」と涙ながらに千代吉に伝える。
千代吉は塀の向こう側から「秀夫‥秀夫‥」と呼びかけ、手を差し伸べた。
秀夫は「父ちゃん‥!」と泣き崩れながら、千代吉の手を握った。
(おわり)
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砂の器 2004年版 実話モデル事件
松本清張先生といえば、実際に起こった事件を元に小説の題材としている作品があります。
今回の砂の器では、特定の人物はいないものの「ハンセン病」を患った方々へ厳しい差別が、この時代多くありましたが、和賀自身のモデルはいません。
しかし、実は中居正広さんが出演した2004年のドラマ版には、人物ではないものの、千代吉が起こした事件のモデルとなったのではないかと言われる、実際の事件が存在します。
それが1938年(昭和13年)岡山県にて起こった「津山事件」です。
津山事件の概要を簡単に紹介します。
男の両親は結核で亡くなり、祖母と二人暮らしだった。
当時、結核は不治の病であり、遺伝性であると誤った認識があり、男は村人から受ける風評被害に追い詰められていた。
そして、男にも結核の初期症状が見られ、自暴自棄になり自宅に閉じこもるようになる。
さらに将来を近いあっていた女性にも、病気を理由に別れを告げられ、女性は別の人と結婚し嫁いでいった。
病気のことが村で広く知られ、村八分の状態になり、男はますます追い詰められていく。
数年後、男は婚約していた女性が、弟の結婚式のために村に戻ってきたところを見かけ声を掛けるが、冷たくされてしまう。
そのことが事件の引金を引くこととなってしまい、男は深夜に村人の家に押し入り次々と命を奪う。
しかし、自身を非難したもの、しなかったものの選別はしていた。
そして、約1時間半の間に30人もの村人の命を奪い、男は山で自ら命を絶ったのだった。
(おわり)
砂の器【感想】
動機や事件までの生い立ちは違えど、どちらも苦しみ続けたのは激しい「差別」や「いじめ」でした。
恩人であり、秀夫(和賀)を助けようとしてくれた三木を自身の保身のために、命を奪うなんて‥
と思いますが、それほど秀夫が受けてきた差別やいじめは耐え難く深く苦しい思いをしてきたのだろうと思うと、なんとも複雑な気持ちになってしまいました‥。
原作版では「和賀=秀夫」であることは、最初から明かされず少しずつ、つながっていくものですが、中居正広さんのドラマ版では最初から「和賀=秀夫」であることがわかっています。
最後は、塀の中で生きていた千代吉に泣きながら親子の再会を果たすというシーンで終わり、その前に和賀が最後のコンサートにて「宿命」を弾きながら父とのこれまでを回想するシーンは涙が止まりませんでした‥。
原作版やドラマ版もそれぞれの良さがあって、内容がわかっていても楽しめる作品です。
まだ読んでいない、見ていない方はぜひとも合わせて楽しむことをおすすめします!
やっぱり松本清張作品はすごい‥!
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